正直しんどい

140文字では書ききれないパッション

【闇金ドッグス7】感想文


「闇金ドッグス7」予告

 

 須藤司は安藤に向けて「ヤめます」とめちゃくちゃな辞表を書いてラストファイナンスから居なくなる。それが全作闇金ドッグス6の最後の場面だった。今作7は須藤司をメインに据えた物語だ。

 

 ラスファイを辞めた司は食べるものもままならず、公園で寝泊まりする上に鳩に与えられた餌のパン切れを拾い集めて食べる始末。空腹に耐えかねてキャバクラのボーイを始めるが、そこで司に対して愛想の悪いキャバクラ嬢、エマと出会う。

 このとき須藤司は27歳。年齢を聞かれた司は「まだ」27歳と言うがエマはバカにしたように「もう」27歳でしょと言い放つ。四捨五入したら30だと。現実から目を反らす司に対し、エマは冷めた目でスマホを見ながら司の先の人生について語り出す。「借金苦で無理心中」というエマの言葉に、沼岸親子のことがフラッシュバックしてしまう。

 

 一方で安藤忠臣は司の抜けた穴を埋めるべく慣れない求人をし、まるでギャグのような就職面接を経て、安藤を「兄貴」と呼んで慕ってくる大男を採用する。この大男、心意気だけはあるものの回収の出来はいまいちで、採用されてからさほど経たないうちに「盃を返します」とラストファイナンスを去っていく。安藤は再びひとりになってしまった。

 安藤忠臣の走るシーンが好きなので安藤にはもっとたくさん走ってもらいたい。ヘビースモーカーであるために体力が落ちていそうなのに、それでも汗を流しながら煙草に火を点ける場面が愛おしい。健康には気を遣ってほしいが、安藤にはどうしても煙草が似合う。煙草を挟む細い指先が美しい。どうかこの先もアイコスなどは使わずにいてほしい。

 

 須藤司はキャバクラ前で掃除をしていたところ小学校時代の女教師と偶然再会し、「困っている人がいたら助けてあげなきゃ」と言われる。その言葉を受け、店で客に迫られているエマを身体を張って助けたことから、司とエマは少しずつ親密になっていく。

 エマは昼職をしながらキャバクラでも働き、自宅では障害を持つ姉の介護をして暮らしていて、唯一の肉親だった母は病死。奨学金の返済のために借金をしており生活苦を極めている。それでもまっすぐに生きていこうとする姿に、司の沈んだ心は少しだけ晴れていく。

 しかしその後、以前再会した小学校教師に騙されていたことを知る。「小学生時代の司はスーパーヒーローになりたいと願う子どもだった」と教えられたがそれは教師の嘘だった。嘘をつかれた上で金も騙し取られ、そのことで再び司は心を傷つけられるのだ。

 

 エマは借金を返せないことを理由に昼職もキャバクラも辞め、ソープ一本で働くことを決める。それを聞いた司はソープは辞めさせようとするものの、「お金を返せない私が悪い」ときっぱり言い切る。

 お前には幸せになって欲しいと必死に訴える司に、エマはだったら幸せにして。と言うが、司は苦い顔をして自分にはそれは出来ないと言いながらエマを抱きしめる。出来ない、と答えざるを得ないのがせつない……。

 幸せは目に見えないものだと、エマは笑って言う。

 人間の汚さに失望し心を蝕まれていく司にとって、清らかなエマの存在は何よりの救いだったように思う。そしてエマにとってもまた、司の存在は救いであり支えだった。

 

 司がエマを救おうと死に物狂いで用意した30万を受け取ろうとはせず「2万円貸して」「そうしたら利息払うときにまた会える」そう言って笑顔で司にキスをして、奨学金の返済を終えるまで見届けてほしいと言い残してソープへ向かうエマ。なんて美しい魂を持った子なんだろうか。

 

 ラストファイナンスを辞めた司をツンデレ的に再び迎え入れた安藤忠臣の粋さにも大変しびれた。

 安藤忠臣はおでんが好き。皿に盛っていたのは大根とごぼう巻きかな。

 ドエムシコスキーの縄と鞭といい、そんな会話をモソモソしながらおでんを二人で食べるシーンといい、重たい雰囲気のまま終わらないでくれて本当に良かった。

 安藤忠臣の隣にいられるのは須藤司だけなのだろう。司、戻ってきてくれてありがとう。観終わった後にはそんなことを言いたくなる。